「人と会うのが怖い」「上司と目を見て話ができない」「朝礼で大勢の人の前に出ると震えが止まらない」そんな「対人恐怖症」に悩む人が増えています。
症状には個人差がありますが、悪化すると仕事ができない状態に陥ってしまうようなケースもあり、心当たりがある人は要注意です。
今回は、そんな対人恐怖症の原因と治し方についてまとめます。
対人恐怖症の原因と治し方 | 仕事ができない状態になる前に
対人恐怖症とは
対人恐怖症とは、自分の発言・行動・振る舞いが他人に不快な印象を与えるのではないかと不安に感じ、人間関係に支障をきたす強迫神経症の一種です。物事を「恥」と感じやすい日本人に群を抜いて多く、海外でも「Taijin Kyofusho」と呼ばれるほどです。
言葉だけ聞くと、「ちょっと特別な人」というイメージを持つかもしれません。しかし、対人恐怖症の症状を知ると以外に身近な病気だという事に気づきます。
例えば、人前に出た時に起こる下記のような症状が代表的です。
- 極端な不安や緊張を覚える
- 顔が赤くなる
- 汗が止まらない
- 他人の視線が怖い
- 目が泳ぐ
- 手足が震える
- どもる、上手く話せなくなる
傍から見ると、「シャイで緊張しやすい人なのだな」という程度にしか感じないかもしれませんが、本人は、その場から逃げて出したいほどの居心地の悪さや不安を感じています。
また、人と話をしている時以外にも、他人の視線を過度に気にしてしまう視線恐怖症の症状が現れます。例えば、電話や食事をしているだけでも、「周りに見られている」「動作が変に思われている」などと不安に感じ、常に居心地の悪い状態になってしまいます。
対人恐怖症の原因
対人恐怖症の主な原因は過去の失敗・トラウマによる恐怖心だといわれています。他人から「嫌われてしまうのではないか」「無能な人だと思われてしまうのではないか」という、自分への評価に対する不安が根底にあるのです。
これらの症状は思春期によくみられるものですが、症状が重い場合には大人になっても治癒しないことがあります。こうした状態が続くと、自己評価が過度に低くなり、「こうでなくてはいけない」という理想とのギャップに悩むことになります。
対人恐怖症になりやすい人
対人恐怖症になりやすい原因の一つに、その人の性格的な要因があげられます。
- 繊細
- 神経質
- 完璧主義
- 感受性が強い
- 自意識が強い
- 自己主張が苦手
- 内気
- 他人に気を使いやすい
大人しくて他人の反応を見ながら行動する人に多いのですが、実際は性格だけではなく、周囲の環境も大きく影響するといわれています。
思い込みを改める
対人恐怖症の治療において重要な要素として、思い込みを改めることがあげられます。
対人恐怖症の人には、「周囲の人がクスッと笑うと自分が笑われたのだと感じる」「電話をしている時に、周りの人の注目を集めている気がする」といった症状がみられますが、多くの場合、実際にはそのようなことはありません。他人は自分が思っているほど自分を見ていないということを認識しておくことが大切です。
特に仕事においては、「他人がどう感じるか」ということばかりに集中してしまうと、相手の反応が気になって萎縮したり、作業がスムーズに進みません。「仕事を進めるためには何がベストか」という思考に切り替えて進めていく方が、効率も良いですし、精神的な負担も軽くなります。
苦手なことにあえてトライする
少し余裕がある場合には、「苦手なことをあえてやってみる」ことも大切です。対人恐怖症は放置していても改善しません。小さなことでも良いので、少し殻を破ってみると自信につながります。
例えば、朝礼の挨拶で、いつもうつむきながら小さな声で話しているのであれば、思い切って前を向き、大声で話してみましょう。そして誰かに話しかけられた時は、笑顔を意識しましょう。自分が少しずつ変わることで、周りの反応も変わってくるはずです。
重要なのは、失敗しても良いということを忘れず、挑戦した自分をほめる意識を持つことです。その時上手くいかなかったとしても、反省を生かしてまた次チャレンジすれば良いのです。
病院での治療を受ける
対人恐怖症の症状はなかなか周囲に理解されにくく、ちょっとした「あがり症」「緊張しやすい人」程度に思われがちです。しかし、日常生活や仕事に支障をきたしているような場合には、精神科や診療内科での治療を受けてみることをおすすめします。
多くの場合、抗うつ薬や精神安定剤などの処方を受けますが、薬の効果は一時的なもので、根本的な治し方とはいえません。薬物療法と同時に、心理療法やそれに基づく行動・成功事例の積み重ねによって少しずつ改善を目指していくことになります。
対人恐怖症やうつの心理療法としては森田療法が有名です。
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いずれにしても、対人恐怖症は放置していても改善しません。症状が重い場合には、仕事ができないような状態になってしまう前に、早めに治療に取り組むようにしましょう。
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